「お世話になっております、ITサポートの者です。アカウントの確認だけ、いますぐお願いできますか」——落ち着いた声でそう言われたら、あなたは疑えるでしょうか。編集部は最近の海外の報告を読んでいて、少しひやりとしました。メールの偽装だけでなく、“電話”や“SMS”で人になりすまして信頼させ、その場でログイン情報や確認コードを聞き出す手口が、いま世界で広がっているのです。

2026年に入ってからも、英語圏のある攻撃グループが「ITサポート」や「パスワードを忘れた同僚」を装い、電話で担当者を言葉巧みに丸め込んで、社内システムへの入り口を渡させる——そんな被害が数十社規模で報告されています。技術で突破するのではなく、“人の親切心と焦り”を突く。これがボイスフィッシング(英語でvishing)と呼ばれる手口です。

なぜ「電話だと信じてしまう」のか

編集部が特に注目したのは、「メールの詐欺は見抜けても、電話や短いSMSには弱い」という点です。私たちは長年かけて、怪しいメールを疑う習慣を身につけてきました。ところが電話には“生の声”があり、相手が慌てた様子や丁寧な口調を見せると、つい「本物っぽい」と感じてしまいます。しかも「いますぐ」「あなただけ」と急かされると、冷静に確かめる余裕を奪われてしまうのです。

編集部からの注意: 「本人確認のため」「解除のため」と言って、電話やSMSで届いた“確認コード(ワンタイムパスワード)”を口頭で伝えさせようとするのは、典型的な危険サインです。正規のサポートが、あなたにコードを読み上げさせることはまずありません。

VPNは“通信”を守るが、“会話でだまされる”のは防げない

誤解のないようにお伝えすると、VPNはとても頼れる道具です。公衆Wi-Fiなどで、あなたの通信が途中でのぞき見されるのを防いでくれます。実際、外出先での通信を守る意味では公衆Wi-Fiでの対策としてVPNはとても有効です。

ただ、電話口で自分から情報を話してしまう“なりすまし”は、VPNの担当範囲ではありません。VPNは“通信という道”を守る道具であって、“あなた自身が渡してしまった鍵”までは取り戻せない——ここを分けて考えることが大切だと編集部は思います。似た手口として、以前まとめたSMSをつかった詐欺の記事もあわせて読むと、共通する“急かして考えさせない”パターンが見えてきます。

個人が今日からできる“かけ直して確かめる”備え

今日からできること
  1. 電話やSMSで急かされても、その場で情報を伝えず一度切る(本物なら待ってくれます)
  2. 連絡してきた番号ではなく、公式サイトや明細に載る正規の窓口に自分からかけ直す
  3. 確認コード(ワンタイムパスワード)は、たとえ相手が誰でも絶対に口頭で伝えない
  4. 重要なアカウントはパスキーや二段階認証を設定し、コードだけでは入られにくくする

二段階認証やパスキーの仕組みはこちらでやさしくまとめています。あわせてフィッシング対策の記事も、なりすましを見抜く目を養うのに役立ちます。

編集部の意見: なりすましの電話やSMSは、あなたが“うっかりしている人”だから狙われるのではありません。むしろ「丁寧に応対しよう」「早く対応してあげよう」という優しさや責任感を逆手に取ってきます。だからこそ、対策は難しくありません。“一度切って、自分からかけ直す”——たったこれだけで、多くの被害はせき止められます。慌てないことが、いちばんの防御だと編集部は考えています。
Image by Fidsor on Pixabay(出典: Pixabay